三省連携で省エネリフォームをバックアップ!

2050年カーボンニュートラルの実現を目指すため、国交省だけではなく、経済産業省と環境省も、住宅リフォームに対する施策に動き出しました。昨年に引き続き、省エネリフォームに対する補助金制度が今年も成立したのです。

 

日本の冬は結構寒い…、それなのに住宅の断熱性能はお粗末なままです。冬が寒いのは当たり前、寒いのを我慢するのも当たり前…、そんな精神論が日本人のどこかに沁みついているのか??

寒さをしのぐためには未だ局所暖房(ストーブやこたつなど)が主流ですが、設備機器や電化製品の省エネは進んでいるのに、家という器自体の断熱性能が低いために、無駄にエネルギーを消費している現実もあるのです。

 

それは何故か? 住宅における一定の省エネ基準はあるものの、現在はまだ義務化されていないので、未だに低性能の住宅でも建築できるからなのです。「お金がかかるなら敢えて省エネはしなくていっか!それよりも、便利で豪華な設備機器に予算を割いた方が満足感は高いよね!」という、消費者側の判断もあったりするんですね。あるいは、省エネ計算や認定手続きに不慣れな工事業者が、敢えてお勧めしない、という構図もあったりします。

今までも補助金制度はあったものの、省エネに特化した使いやすいものはなく、また、予算も少ないのが常でした。ここにきてやっと、余計な手間がかからず、計算もしやすい、使い勝手の良い補助金制度がカタチになったのです!

省エネ性能の良し悪しが、住環境にどのように影響してくるのか、だんだん認知されるようになってきました。補助金制度を有効活用することで、快適な暮らしが手に入り、更に、カーボンニュートラルの実現に寄与できるとしたら、使わない手はないですよね。

 

ここでは、子育てエコホーム支援事業に加えて、連携事業として創設された「断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業(経済産業省・環境省/予算1350億円)」について、リフォームに特化した詳しい説明を行いたいと思います。

「先進的窓リノベ支援事業」の公式ホームページはこちら >>

※ 経産省が実施する給湯省エネ2024事業(令和5年度補正「高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金」)も、昨年とほぼ同様に実施されることが決まっていますが、ここでの詳細説明は省きます。

 

これら三つの補助金制度はワンストップ申請が可能ですから、子育てエコホーム補助金の説明ページと合わせて、参考にしてくださいね!(^^)!

 

省エネに寄与する断熱リフォームは窓が肝!

 省エネリフォームで一番効果が高いのは窓の断熱です。環境省が制度化した補助金の対象はそれだけ。制度の名前も「先進的窓リノベ」と言い切ってますからね。

一方、国土交通省が創設した「子育てエコホーム補助金」では、省エネリフォームをベースに、更なる住環境の充実に資するリフォーム(子育て対応改修やバリアフリー改修など)にも補助金が割り当てられています。

  工事内容 補助対象
① 環境省 省エネ改修 高断熱窓の設置 高性能の断熱窓
② 経産省  高効率給湯器の設置 高効率給湯器
③ 国交省 

 

開口部・躯体等の省エネ改修 断熱窓、断熱材、エコ設備
その他の改修 子育て改修、バリアフリー化等

※ ①は「先進的窓リノベ」 ②は「給湯省エネ」 ③は「子育てエコホーム」と呼ばれます。

※ いずれも工事請負契約日の縛りはありませんが、令和5年11月2日以降に工事に着手したものしか対象になりません。

省エネリフォームの要、窓断熱はどっちがお得??

窓断熱の補助額を比較してみると…。

上表を見ると分かるように、窓の断熱に関しては①及び③の制度で補助金が用意されています。

省エネ性能といっても様々なレベルがあるのですが、特筆すべきことは、性能レベルによって補助額も違ってくるということです。(昨年のこどもエコすまい補助金からそのようになりました。)

従来の制度では窓断熱の補助額は一定でした。断熱性能が高い窓でも低い窓でも、貰える補助金は一緒です。でも、高性能な窓の商品単価は高い…、というわけで、高性能な断熱窓はなかなか採用されなかったという経緯があります。もっと言えば、断熱地域によっては高性能な窓しか対象とならないのに、日本全国補助額は一律という不公平もあったんですよね。

そこで前回から、高性能な窓に対しては補助額を上乗せすることになりました。そしてその補助額も、今回、一部上乗せ改定されました。③の「子育てエコホーム補助金」の補助額を下表に示します。(赤字は前回より補助額が上がったものを示します。)

分類 大きさの区分 ガラス交換 内窓設置・外窓交換 ドア交換
省エネ基準レベル 11,000 円 25,000 円 37,000 円
8,000 円 20,000 円

3,000 円 17,000 円 32,000 円

ZEHレベル

14,000 円 34,000 円 49,000 円
10,000 円 27,000 円

4,000 円 22,000 円 43,000 円

ZEHレベルは、ざっくり言うと、省エネ基準レベルより20%ほど性能が高い水準です。でも、その分商品単価も上がります。補助金の上乗せがあるからZEHレベルの省エネリフォームをしよう!とはなかなかならないかも…。

住環境全体を向上させたい国交省としてはこれが精いっぱいなのかもしれません。でも、そもそもの立ち位置が違う環境省は、窓断熱に対する想いが熱い! ①の「先進的窓リノベ」補助金についてまとめたものが下表です。 (赤字は前回より補助額が上がったもの、青字は下がったものを示します。)

グレード 大きさの区分 ガラス交換 内窓設置 外窓(ハツリ) 外窓(カバー)
SS 55,000 円 112,000 円 183,000 円 220,000 円
34,000 円 76,000 円 136,000 円 163,000 円
11,000 円 48,000 円 91,000 円 109,000 円
S 36,000 円 68,000 円 118,000 円 149,000 円
24,000 円 46,000 円

87,000 円

110,000 円

7,000 円 29,000 円 59,000 円 74,000 円

A

30,000 円 52,000 円 92,000 円 117,000 円
19,000 円 36,000 円 69,000 円 87,000 円

5,000 円 23,000 円 46,000 円 58,000 円

※ カバー工法の補助額が新設されました。(前回はハツリ工法と同額)

※ ドアのガラス交換は対象外ですが、ドア交換が新たに対象となりました。

※ 4階建て以上の共同住宅の場合、外窓交換に対する補助額が変わってきます。

 

見ての通り、グレードが高くなるほど補助額も上乗せされています。先ほど、断熱地域について少し触れましたが、この補助額の差は、断熱地域による不公平感を無くすためにあります。大雪が降るような北日本が必要とする断熱性能と、私たちが住む福岡県に求められる断熱性能は違うのです。補助金の対象になるためには、Sグレード以上でなければいけない地域もあるし、Aグレードで十分な地域もあるのです。福岡県は幸いなことに後者です。ZEHレベル商品の中には、Aグレード商品として認定されたものもあります。同じ商品を使って省エネリフォームを実施するなら、補助額の高い制度を使った方が負担は小さくなりますよね。

 もう一つ、こちらの方に軍配が上がる理由があります。それは、内窓設置よりも外窓交換の補助額が高くなっている点です。子育てエコホーム補助金の場合、両者は同額です。でも、工事にかかる費用は圧倒的に外窓交換の方が高いのです。内窓設置は、外窓交換よりも工費圧縮や工期短縮が図れるのがお勧めポイントですが、長い目で見れば、外窓交換の方が断然いいと思います。

いかがですか?「先進的窓リノベ補助金」の方が実際に即した補助額設定が為されており、より効果的な省エネリフォームを実現することができるのではないでしょうか。

 

と、ここまでは前回の説明文と同じで大筋はその通りなのですが、補助額の上がり下がりを見ると、ここにも、政策誘導の意図が滲み出ています。

内窓は工事が簡単なこともあり、ある程度の普及は達成されました。多少補助額を下げたとしても受け入れられやすい商材です。でも、本当の断熱はやはり外窓交換です。カバー工法はハツリ工法に比べると簡単な工事で済み工期も短縮できます。消費者の気持ちをそっちに持って行きたい!ということで、今回、ハツリ工法に上乗せする形でカバー工法の補助額も決定したようです。

確かに、内窓設置は断熱性も気密性もアップするので費用対効果は高いと思うのですが、開閉が二重になるというデメリットがあります。外窓交換(カバー工法)にするとそれは解消されるので、更に快適な暮らしを手に入れることができるのではないか、と思います。

 

補助額だけでなく、補助上限額も雲泥の差!

先進的窓リノベ補助金は窓断熱に特化した補助金ですから、その上限額も魅力的!なんと、一戸当たり200万円です。部屋を限定して断熱するのもいいのですが、スケルトンリフォームを計画するなら全ての窓の断熱化を図りたいものです。それを叶える原動力としては、かなりインパクトがあるのでは? 

断熱性能を強化すれば、工事費はそれなりに高額になりますが、補助率が50%を超えるケースもあるそうなので、検討の余地はあるのかもしれませんよ。

これは余談ですが、先日参加したサッシメーカーの販促説明会(今年も実施されました。)では「工費の半分相当額が補助金で賄えて、更に省エネリフォーム後の光熱費も圧縮できるので、実質ゼロ円で快適な暮らしが手に入る!」とかなり鼻息が荒い説明が…。但し、圧縮できるであろう光熱費の想定は20年間の積算です(笑)

確かに、断熱窓を販売する絶好のチャンスではありましょう。そして、省エネは国を挙げて実現すべきテーマでもあります。でも、工事費を負担してリフォームするのは個々人です。どこまで補助金を利用して省エネリフォームを実施すべきか、最終的には、自分の懐加減と相談しながら、自分で決断することが重要ですよね!(^^)!

 

補助金申請は工事事業者との協力が不可欠

子育てエコホーム補助金の説明ページでも書きましたが、補助金を勝ち取るためには、工事事業者との協力が不可欠です。 

自分の希望するリフォーム工事は補助金の対象となるのか、また、工事費に対して補助金の合計額はいくらぐらいになるのかなど、全体を見通して計画を練る必要があるのです。

補助金は予算ありきなので、予算額に達するとスパッと打ち切られます。何事においてもそうですが、特に今回の補助金制度は注目の的ですから、早めに準備にとりかかることが大事なんですね。