中古住宅の補助金リフォームとは?

マイホーム取得の方法として「中古住宅購入×リフォーム」が注目を集めています。

人口減少、家余り、空き家問題を抱える現代社会において、住宅は過剰供給気味とも言える状況にあります。未だに建売住宅や分譲マンションが建築され続けていますが、その一方で、まだ十分利活用できる中古住宅が、余剰物件として市場に溢れているのです。

中古住宅は「古い、汚い、怖い、わからない」とよく言われます。築年数と表面の汚さだけが目につき嫌悪感を抱きがちですが、リフォームで改善できることもたくさんあります。そんな中古住宅の積極的な利活用を実現するために、国は補助金制度を策定しその利用を促進しています。

 

補助限度額100万円!?「長期優良住宅化リフォーム推進事業」をご存知ですか?

補助限度額100万円って凄いですよね!この事業は、良質な住宅ストックの形成や、子育てしやすい生活環境の整備等を図るため、既存住宅の長寿命化や省エネ化等に資する性能向上リフォームや子育て世帯向け改修に対する支援を行う事業です。令和3年度版は更にパワーアップ!補助の対象として、テレワーク環境整備改修工事も追加されました。

 

この事業の先にある目的は何?

中古住宅を購入して新たな居住者が入居前にリフォームする、あるいは、長年住み続けてきた我が家を、子世帯同居をきっかけにリフォームするなど、年数を重ねてきた既存住宅はいずれリフォームの時期を迎えます。リフォームのタイミングで積極的に既存住宅の長寿命化を図り、社会資産としてストックすることにより、将来に渡って、建物の循環を促す社会を構築することを目的としています。

 

どんな建物が対象なの?

対象となるのはリフォームを行う住宅です。既存の戸建住宅、共同住宅(マンション)いずれも対象となります。事務所や店舗などの住宅以外の建物は原則対象外です。

 

補助金はいくらもらえるの?

リフォーム工事費合計の1/3の額が補助されます。補助限度額は100万円/戸、更に要件を満たせば50万円/戸の上乗せがあります。「300万の工事をすれば100万もらえるの!?」 残念ながら、そんな簡単な話ではありません。

ここで注意が必要なのは、リフォーム工事の内容と想定される工事費です。補助金算出のベースとなるリフォーム工事費は、実際にかかる工事費ではなく、国が定めた辛めの工事費だということ。その金額でその工事をすることははっきり言って難しい金額です。更に厳しいのは、どんなリフォームでも補助の対象になるわけではないという点です。

公的資金を投入する以上、社会資産となり得る長寿命化された住宅でなければならないわけですから、それに資するリフォーム工事でなければ補助金の対象とはならないのです。つまり、自分が行おうとしているリフォーム工事とその建物が、補助金の対象となるかどうかを事前に検証する必要があるわけです。

 

どんな費用が補助の対象になるの?

まず工事費としては、住宅の性能向上リフォーム工事費などが補助対象となります。更に、本事業に必要とされるインスペクションの実施や、リフォーム履歴・維持保全計画の作成にかかる費用なども補助の対象となります。

 

性能向上リフォーム工事ってどんな工事?

劣化対策や耐震性、省エネ対策など特定の性能項目を一定の基準まで向上させる工事と、それ以外の性能向上工事に大別されます。それぞれについて対象となる工事が定められており、それ以外の工事は補助の対象にはなりません。

例えば、構造躯体の劣化対策として行う床下の防腐・防蟻処理、耐震性を確保するための屋根の軽量化、省エネ対策として効果が高い断熱サッシへの交換などを行うことで、特定性能が一定の基準以上まで向上させることができれば、特定性能向上リフォーム工事として補助の対象となります。つまり補助の対象は、国が政策的に誘導したい工事に限られており、見栄えをよくする工事全般は対象外ということなのです。

ただ、特定性能に関する工事以外でも、性能向上に資する工事であれば補助の対象となるものもあります。例えば、バリアフリー改修やインスペクション(事前調査)で指摘を受けた箇所の改修、テレワーク環境整備改修や高齢期に備えた住まいへの改修(どちらも令和3年度に追加されました)です。

また、三世代同居対応改修や子育て世帯向け改修についても、それぞれの目的に特化したリフォーム工事が指定されており、それを実施する場合は補助の対象となります。

 

更に、防災性の向上とレジリエンス性の向上改修工事も対象となりました(どちらも令和3年度から対象に)。防災性の向上とは、地震災害・台風・水害・火災への備えを強化すること。例えば、瓦・樋の交換や下地の補強、雨戸やシャッターの設置や交換、開口部の性能向上(耐風、耐火)などです。レジリエンス性の向上とは、電力や生活水の確保、防災備蓄のためのスペース確保のことを指しています。対象となる工事は、例えば、蓄電池や自家発電機の設置工事、貯水タンクの設置や、防災倉庫を設置するための増築工事なども対象となります。

 

補助対象外の工事ってどんなもの?

単なる設備交換工事や、子育て世帯向け改修ではない間取り変更工事、内装工事や意匠上の改修工事など、建物の長寿命化に直接関係しない個人の希望で行うリフォーム工事などは対象外となります。本物のリフォーム工事は、やりたいこととやるべきことを融合してこそ成立するものです。補助金制度は言うなれば、この「やるべきこと」に対して費用の一部を出しますから、積極的に本物のリフォームを実施してくださいね、という趣旨で用意されたものなのです。

 

補助金を受け取るために必要なことって?

① リフォーム工事前にインスペクション(建物調査)を実施すること

リフォーム工事に先立って、必ずインスペクション(建物調査)を実施する必要があります。

インスペクションで劣化事象が見つかった場合は、今回のリフォーム工事と同時に補修を行うか、維持保全計画に点検・補修等の対応方法と対応時期の明記が必要です。インスペクションは、建築士である既存住宅状況調査技術者が実施する必要があります。

② リフォーム後の住宅が、一定の性能基準を満たすこと 

具体的には、構造躯体等の劣化対策、耐震性、省エネルギー対策、これら3つの性能が確保されていることが条件になります。既存住宅の現状がこれらの基準を満たしていれば問題ないのですが、この基準を満たすために、やるべきリフォーム工事が出てきます。自分としてはあまり必要ないと思っていても、この基準を満たさなければ補助の対象住宅には成り得ないので、補助金を手にすることはできなくなります。古い住宅にとっては結構高いハードルだと思います。

③ リフォーム履歴と維持保全計画を作成すること

リフォーム工事の履歴として、工事内容を示す図面や工事写真等をまとめて保存することが必要です。住宅を長持ちさせるため、維持保全の期間(30年以上)について、少なくとも10年ごとに点検を実施する維持保全計画を作成することが求められています。

 

手続きの方法は?

この事業に申し込みをする者(補助事業者)はリフォーム工事の施工業者です。補助金は、この補助事業者を介してリフォーム工事の発注者に還元されます。また、本事業の補助事業者になるためには事前登録が必要であり、どこでも補助金申請ができるわけではありません。

補助事業者とリフォーム工事の請負契約を締結し、補助金の交付申請時には、補助事業者と発注者で取り交わした共同事業実施規約の提出が必要です。

 

申請期限はいつ?

令和3年度補助事業の実施スケジュールは下記の通りです。(期限が延期されました。)

  • 住宅登録は、令和3年4月9日(金)~令和4年1月21日(金)まで
  • 交付申請の受付は、令和3年5月10日(月)~令和4年1月31日(月)まで
  • 完了実績報告の受付は、令和3年6月14日(月)~令和4年2月18日(金)まで

住宅登録後1ヶ月以内に交付申請する決まりになっており、これが守られない場合はロックオフ状態(交付申請不可)になります。この措置は令和3年度から追加されたものです。おそらく、よく確認もしないまま住宅登録だけはしたものの、補助対象住宅にするために必要な(発注者にとっては不要な)リフォームが多すぎて、補助金のうまみが薄いことに気づき放置される案件が多かったのではないかと思います。予算あっての事業なので、当たり前の措置だと言わざるを得ません。

この事業は、長寿命化リフォームのメリットを本当に理解した事業者と発注者が、目先の工事受注や補助金目的ではなく、性能向上リフォーム工事により安全で快適な住環境を造り上げるためのものなのです。 

補助金利用には綿密なスケジュール管理が欠かせない

不動産購入を思い立った時、今までなら不動産仲介会社に相談すれば事足りていました。しかし、取引の中心が中古物件に移行した今、建物の状況を正確に把握しリフォームで改善することを考えれば、物件購入の流れと並行して、建物の調査・診断・リフォーム計画を同時進行で行うことが非常に重要になってきます。

特に補助金を使ってリフォームをする予定なら、購入予定の建物が補助金の要件にあっているか、計画しているリフォーム工事が補助金の対象となるかなど、早い段階で知る必要があります。マイホーム取得という目的に向かって全ての流れを滞りなく推し進めていくには、不動産にも建築にも精通したプロのサポートが不可欠なのです。

 

この「長期優良住宅化リフォーム推進事業」は平成26年からスタートしており、毎年改善・継続され現在に至っています。令和3年度においては、コロナの影響によるテレワーク環境の整備や、昨今多発する災害に対する自助努力の促進など、個人のリフォーム工事で社会全体の対応力を底上げしたい! そんな気持ちが滲んでいるように感じてなりません。

  

リフォーム計画を立てるにも、補助金を申請するにも、対象となる住宅が確定しなければできません。「中古住宅購入×リフォーム」を成功させたいなら、不動産購入の正しい道筋を早めに歩き出すことをお勧めします。

  

 

私たち「いえあーる」は、宅建業者であり一級建築士事務所でもあります。中古住宅購入からリフォーム工事までワンストップで対応できるのが最大のウリなのです。

 

今回は建築サイドのお話しでしたが、マイホーム購入のポイントも山ほどあります。無料の対面相談も行っていますので、「もっと詳しい話が聞きたい!私の話も聴いてほしい!」という方は、お住まい相談室に是非お越しください。