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【福岡発】「安心R住宅」は、不動産業界に積極的に受け入れられるか?

安心R住宅制度で安心は得られるのか??

売主さんから大切なマイホームの売却を依頼された場合、仲介業者は物件に関する事柄を調査し、公開する責任があります。買主さんが検討しやすいように、できるだけたくさんの情報を惜しみなく提供するのは、至って当たり前のことだと思いませんか?それをわざわざ制度化するっていうんだから、業界の自浄作用は期待できないと言われたようなものです。

 ネットで物件検索してると感じませんか?積極的に写真を掲載し、情報欄がきちんと埋まっているものもあれば、調査は後回しなのか、空欄だらけで公開しているものもあることを。

中古住宅流通を促進するためには、買主さんが安心して購入できるように市場を整備する必要があると国は感じています。中古住宅購入をためらう理由でよく言われることは、「品質が不安」「見た目が汚い」「情報が不足してわからない」という三点です。これらの懸念点を払拭し、「住みたい!」「買いたい!」中古住宅にするために、安心R住宅制度が生まれました。  

安心R住宅の要件は?

では具体的に、どうすれば「安心R住宅」の称号を得ることができるのでしょうか?見てみましょう。

  1. 不安の払拭のために、既存住宅売買瑕疵保険の検査基準に適合した、ある一定水準以上の建物であること
  2. 汚いイメージを払拭するために、リフォームを実施、又はリフォーム案をセットで提示すること
  3. 情報不足解消のために、広告の段階から調査を尽くし、買主さんの求めに応じて情報提供をすること

これら三つの要件は、買う側からすれば、ある意味当たり前のことだと思うのですが、クリアするのはなかなか難しいかもしれません。

売主や仲介業者の反応は?

売主さんにとっては、高いハードルだと思われるでしょう。

そもそも自分の家が 1. の基準に適合していない場合は利用できません。それよりも何よりも、調査費用の負担を受け入れることができるかも考え物。更に、3. を履行するためには、マイナスイメージになりそうなことでも、早い段階で情報開示する必要があります。更に 2. に至っては、リフォームをして売却することはまずあり得ないでしょうし、リフォーム提案によって費用がかさむ印象を与えるのも、受け入れがたいかもしれません。

仲介業者にとっても、今までのやり方からすると非常に手間と時間がかかります。1. の調査や、2. や 3.

 の資料作成など、不得意な分野も含めて対応しなければならないのですから…。それでも、請求できる仲手数料は同額なのです。売上至上主義の彼らが、好んでやるとは到底思えません。 

「安心R住宅」の称号を得て売却活動をすることは、信用が高まるという点からすると、たとえ費用や手間暇がかかったとしても、売り主さんにとってもメリットのあることです。来年4月(2018.4月)からこの制度がスタートして、売主・買主双方の安心のために徐々に定着していくといいなぁとは思うのですが…。すみません、今のところは、正直言って疑問です。 

(2025.4.4追記)

安心R住宅は、あれからどうなった??

あれから7年が経ちました。国の思惑通り、安心R住宅の認知は広がったのでしょうか?

令和5年度(2023年度)の統計を見てみると、戸建住宅(リフォーム済み)が494件、戸建住宅(リフォーム提案)が150件、共同住宅に関してはほとんどがリフォーム済み物件で1446件、リフォーム提案は2件あったようです。つまり、年間で2092件の安心R住宅が生まれました。ちなみに、令和5年度(2023年度)までの累計は9005件です。

これは…、どうでしょう?? 積極的に使われている感はないような気がするのですが…。

 

別に、安心R住宅じゃなくても、安心を得ることはできますよ。

物件の状態を見極めることができるプロに相談すれば、劣化状態の診断もできますし、リフォーム提案もできます。「安心R住宅じゃなきゃ心配!」というわけでもないのです。

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