② 住宅ローンの仕組みを解説

固定か変動か、どこの金利が一番低いか、そんなことよりもっと大切なことがあります!まずは住宅ローンのシビアな仕組みと言葉の意味を知り、比較検討の重要性を理解しましょう。

住宅ローンの概要と三つの融資条件

住宅ローンは、自らが居住するための住宅(戸建て、マンション)及び土地を対象として、購入、新築、増改築などを行うために金融機関が貸し出す個人向けの融資です。

ちょこっと解説

 契約者本人、及びその家族が居住する目的で購入するマイホームが対象となります。建売住宅、分譲マンションはもちろん、土地を購入して注文住宅を建てる場合も使えます。また、中古住宅(戸建て、マンション)を購入してリフォームする場合も同じく利用可能です。

 住宅ローンの申し込みに際しては、所定の審査が行われます。住宅ローンは何と言っても借入額が大きく返済も長期にわたることから、A-「住宅ローンに対する保証会社の保証」、B-「団体信用生命保険への加入」、C-「対象不動産への抵当権の設定」が条件としてセットされています。

ちょこっと解説

 審査は事前(仮)審査と本審査の2段階となっており、本審査を通過して初めて住宅ローンの契約ができる状態になります。但し、上記の3条件をクリアする必要があります。つまり、保証会社の承認が得られる属性(身持ち)で、健康状態も良く、対象不動産に担保価値がなければ、住宅ローンを利用することはできないのです。

A-保証会社の保証について

住宅ローンの借主(あなた)が、万一、住宅ローンの返済ができなくなった場合、住宅ローンの貸主である金融機関に対して、保証会社が代理返済をします。(このことを代位返済といいます。) 

ちょこっと解説

肩代わりしてくれるんだぁ…と思ったら大間違い! とりあえず代わりに支払っておきます、ということであり、返済義務がなくなるわけではないのです。新たな貸主(債権者)である保証会社に対して、返済する義務は継続します。返済できなければ、自宅を処分してでも返済しなければなりませんし、それでも残債があれば、保証会社からの返済要求は続きます。ほんとにシビアなのです。しかも、保証料は住宅ローンの借主であるあなたの負担ですからね。金融機関は痛くも痒くもないのです。

B-団体信用生命保険への加入について

多くの金融機関が、住宅ローンの契約条件として、この「団体信用生命保険への加入」を上げています。万一、住宅ローンの借主であるあなたが、死亡または一定の高度障害となった場合、この生命保険によって住宅ローンを完済することができます。残された家族にとっても安心の保険となるはずです。

ちょこっと解説

大黒柱を失ったあと、残された家族にローン返済の負担がかかるのは避けたいものです。そのためにこの保険は存在します。残債と相殺するのが目的ですから、保険料は年々安くなるのですが、金融機関によっては、当初からこの保険料を免除してくれるところもあります。ただ、健康状態が良くないと加入が制限されることもあり、そのために住宅ローンの契約ができないというケースもあります。

C-抵当権の設定について

住宅ローンを利用する場合は、対象不動産に普通抵当権を設定します。抵当権は債務の担保です。住宅ローンの返済が滞らない限り、生活に影響することはありませんが、返済が滞るような事態に陥ると、「不動産を処分して一括返済してください!」と言われることになります。

ちょこっと解説

貸す側からしたら当たり前なのかもしれませんが、任意売却や競売に通じる哀しい結末が最初から想定されているのです。どんなに属性が良い人でも抵当権の設定は免れません。

住宅ローンが完済されるまでは抵当権の効力は維持されますので、自宅といえども勝手に増改築したり売却したりできないことになっています。

住宅ローンの申し込み要件について

金融機関によってまちまちですが、一般的な要件について説明します。

どんな人が申込可能か

まずは、申込者が世帯主または真正な生計維持者である必要があります。また、同一勤務先に1年以上勤務している実績が求められます。自営業の場合は営業開始後2年以上経過していることが条件になることも。年収については最低でも250万~300万程度は必要です。なお、前段の融資条件すべてをクリアするのが前提となります。

ちょこっと解説

貸す側の金融機関としては、安定した収入があり返済が滞らない人を求めているのです。審査はあくまでも現状について行われます。因みに、借入後に転職したり独立したりすることもあるでしょうが、それについては何のお咎めもありません。

住宅ローンはどんな費用に使えるのか

本人または家族が住む予定の住宅新築費用及び対象土地の購入費用、あるいは、土地付き住宅(建売住宅)の購入費用、分譲マンションの購入費用、更には、中古住宅(戸建・マンション)の購入及びリフォーム費用に充てることができます。住宅そのものだけでなく取引に必要な諸費用についても住宅ローンで得た資金で賄うことが可能です。勿論、現在住んでいる自宅の増改築工事のために住宅ローンを組むこともできます。

申込時の年齢制限について

一般的に、申込可能な年齢は20歳から70歳くらいではないでしょうか。成人で、仕事に就いている現役世代が対象となります。

ちょこっと解説

金融機関の印象としては若いほどスコアは高くなるようです。安定した収入が長く続くと判断されるからでしょう。


完済時の年齢制限について

一般的に、完済時の年齢は80歳前後以下ではないでしょうか。収入が途絶えた後も返済が続くことが前提になっているなんて…現実的ではないような気もしますが、住宅ローン商品としては普通のことのようです。

ちょこっと解説

人生のイベントが後ろ倒しされるご時世においては、致し方ないことなのかもしれません。結婚も子育てのスタートも以前より遅くなり、住宅購入に乗り出す年齢層も押しなべて高くなっている印象ですから。


返済期間の制限について

一般的には、最長35年と言われています。が、金融機関によっては40年というところも!但し、完済時年齢で頭打ちされますから、申込時の年齢が高い場合は、返済期間を最長にすることは叶わなくなります。

ちょこっと解説

返済期間が長いと何が良いのか?? それは、同じ金額を借りるにしても、毎月の返済額を抑えることができるので安心!という点です。但し、返済期間が長いほど、完済時の利息合計は大きくなります。

また、申込時の年齢が高いと返済期間も頭打ちされるので、毎月の返済額を考えると借入額の上限もおのずと低くなってきます。結果、自己資金を思った以上に捻出しなければいけないことも! 最悪の場合、思い通りの物件を購入することができない可能性も出てくるのです。


住宅ローンにおける返済方式について

住宅ローンの返済方式は2種類あります。一つは「元金均等方式」、そしてもう一つは「元利均等方式」です。長期返済期間において、均等にするのが「元金」なのか「元利(元金+利息)」なのか、たったそれだけの違いですが、そこには大きな違いがあるのです。

ちょこっと解説

多くの金融機関は、この選択肢を借りる側には提示してくれません。住宅ローンは「元利均等返済方式」が前提になっていることが多いのです。それはなぜか、ズバリ、利息の合計額が断然多くなるからです。

「元利均等返済方式」の特徴は?

言葉が示すように、毎回の返済額(元金+利息)が返済期間を通して一定となる返済方式です。そのため、家賃のような感覚で家計管理がしやすく便利と言われています。また、元金均等返済方式と比べると、当初の返済額を低く抑えることもできるので、返済をスムーズにスタートさせることが可能です。

ちょこっと解説

確かに、メリット側の特徴を言えば斯くの如し… ではデメリットは?まずは何と言っても、完済時の利息合計が「元金均等返済方式」よりも多くなるということ。返済当初は特に、返済額に占める利息の割合が大きく、元金はほとんど減らないということに。返せど返せど借金は減らない…利息は金融機関の儲けですから、返済期間という時間的猶予を、高い利息で買っていることに等しいのです。

「元金均等返済方式」の特徴は?

簡単に言えば、「元利均等返済方式」の裏返しです。こちらも言葉が示すように、一定になるのは元金です。借入額を返済期間で割った元金に、残り期間の利息を上乗せして毎月の返済額を決定するイメージですね。なので、毎月の返済額は少しずつ減っていきます。元金の返済は毎月同じなのですが、借入額の減少に伴い利息分が減っていくからです。

ちょこっと解説

良いことだらけかと思いきや、そんなことはありません。スタート時の返済額は「元利均等返済方式」に比べるとかなり高くなります。家計管理上これがクリアできなければ「元金均等返済方式」を選択することはできません。ただ、スタート時点から元金の返済がどんどん進んでいきますので、完済時の支払利息の総額も「元利均等返済方式」よりもかなり抑えられます。返済期間が同じであれば、「元利均等返済方式」よりもお得に時間的猶予を手に入れたことになりますね。

毎月返済とボーナス払い併用返済のどちらがいいか?

返済方法は、毎月支払う方法(毎月払い)と6ヶ月ごとに支払う方法(ボーナス払い)があります。基本は毎月払いですが、ボーナス併用を選択することも可能です。但し、ボーナス払いは借入金額の50%までなど、金融機関ごとに上限が設定されているようです。

ちょこっと解説

借入額の一部をボーナス払いにすれば確かに毎月の返済額は抑えられます。でも考えてみましょう。ボーナスは業績によって出たり出なかったりするものでは??あぶく銭だと考えた方が無難ではありませんか?基本的には毎月払いの返済額で家計がなりたつかどうかを考えるべきでしょう。

金利タイプについて

住宅ローンの金利タイプには、A-「変動金利型」、B-「金利選択型」、C-「全期間固定金利型」の3種類があります。また、金融機関によっては「ミックス型」と称して、種類の異なる金利タイプを組み合わせることもできるようです。

ちょこっと解説

大別すれば2種類です。変動か固定か…どっちつかずの金利選択型やミックス型は、焦点がぼやけるのであまりいいことないのでは??悩むポイントが増えるだけかなと思います。

住宅ローンの金利は常に変動している

住宅ローン金利の推移は、基準貸付利率(旧名称:公定歩合)に概ね連動しています。基準貸付利率というのは、日本銀行が民間銀行に貸出を行う時の基準金利です。この推移をみれば、住宅ローン金利の推移を把握することができると言われています。「バブル」と言われた1980年代から1990年前半の金利は、現在に比べると考えられないほど高金利(最高9%)! 逆にここ20年程は歴史的に見ても低金利(1%を下回るほど)の状態が続いています。

ちょこっと解説

住宅ローンの金利は、この基準貸付利率の変動に連動して、その時その時で決まるのです。住宅ローンを組む際に「変動金利型」を選択すれば、金利変動の影響を完済時まで受けることになります。逆に「全期間固定金利型」を選択すれば、住宅ローン契約時の金利で完済まで返済を続けることになります。契約時の金利はその時の基準金利で決まりますので、固定といえども、バブル期と現在では雲泥の差があるのです。

変動金利型について

① 変動金利型は、基準金利に連動して金利が決定する

基準金利とは、市場金利の動向などを参考にして各金融機関が毎月見直しを行い決定している金利のことです。

ちょこっと解説

上記説明のように、基準金利は毎月変動しています。住宅ローンの融資は、申込をしてから数か月先になるのが一般的です。ということは、その数か月の間にも金利が変わる可能性があるのです。実際に適用される金利(貸出金利)は、申し込み時点のものではなく、融資時点のものになります。そして、当初の貸出金利と貸出時点における基準金利との金利幅に連動して、完済時まで変動し続けることになります。

② 金利見直しのタイミングと5年ルール

変動金利型の住宅ローン金利の見直しは半年ごとに行われます。前回の基準金利と今回の基準金利との差に連動して上下します。但し、返済額の見直しは5年毎というルールもあります。

ちょこっと解説

金利の変動に合わせて半年ごとに返済額も上下してたら大変ですよね!影響が出るのは5年先かぁ、良かった…なんて、悠長な話ではありません!

金利が下がり傾向の場合は問題ありませんが、上がり基調の場合はハラハラしながら5年間を過ごすことになります。半年ごとにジリジリと上がり続けた金利分の影響が、5年後の返済月額を確実に押し上げるのです。5年間払い続けた返済額の内訳も、当初の予定より利息の割合が大きくなって、元金はほとんど返せてない!なんてことも起こるわけです。

③ 返済額見直しにおける125%ルール

変動金利型ですから返済額が変動するのは覚悟の上、ですよね。でも、急激な返済額の上昇は家計を不安定にし、延滞を引き起こす可能性があります。このような状態は貸した側も避けたいところ…なので、返済額の上昇を緩和する措置として、見直し後の返済額は見直し前の返済額の125%(1.25倍)までというルールがあります。

ちょこっと解説

勘違いしてはいけませんよ。値引きしてくれるわけではないのです。返済額の見直しで回収しきれなかった金利分は、次のタイミングで計算にねじ込まれます。影響が先延ばしされたに過ぎないのです。収入は変わらないのに毎月の住居費が25%も増えたら…想像してみてください。

 ④ 変動金利型のリスクを確認しておきましょう!

思い出してください。元利均等返済方式では、元金部分と利息部分の割合を調整して、見た目の返済金額を一定にしていましたよね。逆に言うと、返済月額は一定ですが、その実、半年毎にその割合は変動しているということになります。

ちょこっと解説

もし、5年間金利が変動しなかったら、当初の予定通りに、少ないながらも元金は減り続けます。しかし、半年ごとに金利が5年間上昇し続けたら、毎月支払う返済額のほとんどが利息部分となり、元金は一向に減らないという状態(繰り延べ状態)になるかもしれません。更には、毎月支払う返済額では利息の支払いにも足りず、未払い利息が積みあがっていく可能性だってあるのです。

125%ルールがあるために、これら繰り延べ元金や未払い利息分が次の5年間で解消されない場合もあり、更なる繰り延べが行われることに…。そして返済期間中に解消されなかった場合は、最終返済日に一括清算する決まりになっているのです。

⑤ 変動金利型の支払利息の合計は、完済時しかわからない

以上のように変動金利型は、5年ルールや125%ルールが存在することにより、返済予定明細表通りに返済が行われても未払い利息や元金の繰り延べが発生することがあります。

 

 

ちょこっと解説

金利上昇局面がこれからやってくるのかどうかは誰にもわかりませんが、変動金利型の仕組みとルール上、このようなことも起こり得るということです。返済予定明細表には返済額の内訳も明記されていますので、金利上昇局面においては特に注意して確認することが大切です。

固定金利タイプについて

① 全期間固定金利型の仕組み

全期間固定金利型住宅ローンは、借入の全期間が固定金利となる住宅ローンです。金利が固定されるので、返済額も全期間一定となります。

ちょこっと解説

固定金利の住宅ローンといえばフラット35が有名ですが、地方銀行など一般の金融機関にも固定金利の住宅ローンはあります。金利選択型の一種で、全期間を特約期間として固定金利にするものです。

全期間固定金利型は毎月の返済額が一定なので、将来の見通しが立てやすく安心と言われています。確かに、変動金利のハラハラ感を味わう必要は無さそうですね。 

② 考えられるリスク

市場金利が下落した場合、それ以前に契約した全期間固定金利型の住宅ローンは、市場金利よりも融資金利の方が相対的に高いことになりますが、融資金利は固定ですから返済額も変わらず、そのまま返済を続行することになります。

ちょこっと解説

金利が下がるということは、同じ借入額で返済期間も同じなら、毎月の返済額も抑えられるということです。世の中がこのような金利下降状況にあってもその恩恵を受けられない…高い金利のまま返済を続けなければならないジレンマが生じるかもしれませんね。ただ、その逆もありです。市場金利が上昇する局面においては、市場金利よりも融資金利の方が相対的に低い状態になり、しかも固定金利なのでその影響を受ける心配もなく安心して返済を継続することができるでしょう。 

③ 繰上返済は要注意

金融機関によりますが、全期間固定金利型は原則的に、繰上返済や返済条件等の変更はできないことになっており、場合によっては違約金の対象となる可能性もあります。

ちょこっと解説

銀行を中心とした住宅ローンの取り扱い機関は、融資に対する資金確保を長期固定の預金で行っています。融資の利息を回収し、預金の利息を支払うことでお金を回しているのです。返済期間満了まで融資の利息を回収できる計算で貸し出しているのですから、繰上返済によって、借入額や返済期間を圧縮されると目論見が崩れてしまい、損失が発生する恐れがあるわけですね。それを違約金として借主に負担させる約束事があるのです。

 

如何でしたか? 

住宅ローンの言葉の意味と仕組みを知れば、注意すべきポイントも見えてきたのではないでしょうか? 具体的な数字を入れてシミュレーションすれば、家計に及ぼす負担の大きさの違いなども確認することができますよ。

 

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住宅ローンを制することで、自分サイズのマイホーム購入を成し遂げてくださいね。