過去のコラムでも何度か説明しましたが、耐震基準が大きく変わったのは1981年、昭和で言うと56年のことでした。つまり、今から37年以上前に建てられたものは旧耐震と呼ばれており、古い耐震基準をかろうじて満たしているという状態、現在の耐震基準に照らして考えると、基準を大きく下回る危険な建物ということになります。
これが木造戸建住宅の話であれば、耐震診断の方法や補強工事の仕方は確立されたものがあるので、お金をかければ基準に適合させることができなくはないです。でも、これがマンションの場合はかなり困難になります。なぜか?マンションは、複数の住戸が集合した一個の建物です。自分の住戸だけを補強して、耐震基準に適合させればよいというわけにはいきません。また、各人の所有は壁の内側空間だけであり、構造体は居住者全員の共有物ということになっています。建物全体の工事を検討するためには、居住者による事前協議が必要なのですが、これがなかなか足並みが揃わず、耐震補強工事の実施には至らないことの方が多いのです。つまり、危険だとわかっていてもどうしようもない、放置状態ということです。そんな危険な物件を購入しますか?売主さんも、危険だからこそ住み替えるために売りに出しているのかもしれません。その後を引き継いで、危険な建物に安心して住み続けられますか?
大事な家族を、そんな危ない住まいに引っ越しさせられませんよね!?でも、ちまたのポータルサイトでは当たり前のように築40年の中古マンションが掲載されています。売却希望価格は約600万、かなり古いものの駅近で便利は良さそうです。物件診断ソフトで診断してみました。「価格の妥当性」「流動性」「管理状況」には大きな問題はなさそうですが、「耐震性」と「住宅ローン減税」については、かなり低いスコアがついています。中古マンションの耐震補強は現実的ではありませんし、それがクリアできなければ、住宅ローン減税の道は閉ざされてしまいます。確かに価格が低いので住宅ローンを組まずとも現金で一括購入という道もあるかもしれませんが、そもそも買う価値はあるのでしょうか?
ブログをはしご読みしていると、今から10年前に築30年で購入した中古マンションを売却するために、色々考えている人のブログに行き当たりました。築年数からして正に旧耐震!危険な状態を知ってか知らずか売りに出そうとしている…。どうやら売却の理由は子供の成長による手狭感。この人は購入当時に住宅ローンを組んだようですが、額が小さかったので既に完済済みのようです。アベノミクスの好影響か、不動産屋の査定金額も高めだったのでしょう。購入価格より高め設定で売りに出したようです。その後どうなったのでしょうか?続きが知りたいものの、ブログの更新がストップしているようで結果報告は今のところないようです。果たして10年前の中古マンション購入は、マイホーム取得の方法として成功だったのか…。
あなたは、地震がきたら倒壊しそうな築40年の中古マンションを、買える金額だからといって買いますか?