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【福岡発】売買契約後、引渡し前に地震が来たらどうなる?

 

不動産取引は完結に時間がかかる

業界誌にこんな質問が掲載されていました。「売買代金の一部を支払い契約締結したが、決済前に大地震に見舞われ建物が滅失してしまった。契約済みには違いないが、それでも残代金を支払わなければならないのか?また、支払い済み代金の返還を請求できるのか?」

 

なるほど、不動産取引は契約と決済引渡しの時期がズレることも多いので、このような問題が発生する可能性が常にあるというわけですね。イメージしたこと、ありますか?

 

買うと決めた後に、代金を支払い物の引渡しを受ける

現金で購入するのであれば、契約と同時に代金の支払いや物の引渡しを実施することは可能ですが、住宅ローンで代金を決済するのであれば、物の引渡しは売買契約の1~2か月後になります。売買は成立しているものの、まだ自分のものになっていないという非常に不安定な時期が存在するのですね。この時期に、売買対象である建物が地震や火事で滅失した場合、どうなるのでしょうか?

 

答はこうです。民法の条文上は、債権者(買主)主義の原則により、債務者(売主)の責任の範囲を超えた事態が生じたことによって消滅・破損した場合には、債権者(買主)の債務つまり支払い義務は消滅しないとされています。対象物が滅失してしまったのに支払い義務だけが残るなんて、「えーっ!?」って思いますよね。民法は何せ古い法律です。通常人の感覚と異なりおよそ常識的とは言えません。なので、引渡し前の建物滅失に関しては、売買契約書の中で「代金債務を消滅させる」との取り決めがなされるのが一般的です。つまり、民法の条文を特約で打ち消すというやり方です。

 

改正民法ではどうなる?

今回の民法改正により、「特約による打消し」というような回りくどいやり方をせずとも、常識的な取り扱いができるように条文が改められました。売買契約後、決済引渡しまでの間に、売主の債務(引渡し)が履行不能になったときには、買主に、売買代金支払いという債務を拒絶する権利、及び契約を解除する権利を与えたのです。買主のリスク回避がきちんと条文化されたのは喜ばしいことですが、実務上は以前からこのような取り扱いになっていましたので、さほど大きな影響はないものと思われます。

 

まさか自分の不動産取引において、このような微妙な取り扱いが発生するかもしれないなんて、思わないのが普通でしょう。でも言われてみれば確かにそうですよね。地震がくるタイミングは誰にもわからないのですから、「もしもはいつかやってくるかもしれない。」という緊張感も大事なのです。

 

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