① 豊かな暮らしと活きる資産

1.日本の住宅は長持ちしない!?

滅失住宅の平均築後年数は、イギリス:77年、アメリカ:55年、日本:30年と言われています。 2018年から30年前というと、1988年(昭和63年)新築物件になります。新耐震基準が制定されたのが 1981年(昭和56年)ですから、そういう意味では、築30年の住宅は存続意義の高い建物であると言えましょう。 それなのに、滅失して新築住宅を建てるとは、あまりにももったいない! 統計上滅失される住宅の平均築年数が30年だとしても、実際には、木造住宅は80年から100年もつと言われています。

しかし、今から 77年前となると 1941年(昭和16年)、55 年前でも 1963年(昭和38年)とな り、この当時の住宅性能を考えると、滅失せずに再利用する意味があるかは疑問です。 リフォームで大概のことは実現可能ですが、基本性能が低い住宅には限界があります。

築年数と状態を見極めて存続意義のある住宅を購入し、リフォームで性能を高めることが大切です。 築年数と価格は一定の相関関係があるので悩ましいところですが、せめて新耐震(1981年・昭和56年以降)、更に言うと耐震現行基準(2000年・平成12年以降)の建物が狙い目です。

 

2.なぜ日本の住宅は長持ちしないのか?

木造住宅は、適切な維持管理を継続すれば 100年でももつと言われています。ではなぜ、30年で壊して新築する考え方が当たり前になっていたのでしょうか?

そこには、国民の根強い新築志向や産業界の思惑がありました。右肩上がりの社会経済情勢においては、家族構成の変化に伴う住まいの更新や、材料の改良・設備機器の進化などを新築住宅で享受するのが当たり前の時代だったのです。

しかし、時代は変わりました。これからの成熟社会では長く使うことが当たり前になっていきます。人口、世帯数ともに減少していくことが明らかになっている状況下において、新築住宅を積極的に供給する意味はないのです。

投資した資本・資源を早々に解体・除去する行為は、経済的観点のみならず、地球環境の観点からも持続可能な社会形成に寄与しません。

今ある住宅(既存住宅)をリフォームすることで長持ちさせ、社会全体で循環させていくことが、成熟社会における最重要課題の一つであることは間違いありません。

 

3.住宅を長持ちさせると住居費負担が軽減する

住宅を長持ちさせるためには維持管理に相応の投資が必要ですが、世代を超えて長きにわたり利用していくことにより、一世代あたりの住居費負担は軽減されることになります。軽減された分を、より快適な暮らしを実現するために、住生活の向上や教育、福祉、余暇活動などに充てることが可能となるのです。

「新築住宅を購入したはいいが、住宅ローンの返済に追われ、毎日の生活に全然ゆとりがない!」という話をよく耳にします。これじゃあ何のためにマイホームを購入したのかわかりませんよね!?

「中古住宅購入×リフォーム」で、住宅費負担に縛られない豊かでゆとりのある毎日を実現することができるのです。

 

4.住宅を長持ちさせると住宅そのものが資産になる

住宅ローンで購入する住宅のイメージは負債スタートです。現在の査定システムでは、完済するころには価値ゼロ状態とみなされます(木造住宅の償却期間はおよそ25年と言われています)。古家と称され解体値引きの対象にされることもあるほどです。

が、世代を超えて利用し続けることが当たり前となり、住宅が本来もつ価値に見合った評価が適切に行われるようになれば、「住宅=資産」という概念が生まれ、将来的に売ったり貸したりすることも容易に考えられるようになります。

国民が蓄積してきた大切な資産を、社会的資産としてストックし循環させることによって、将来世代が豊かな生活の拠点として有効活用してくれるようになるのです。

そのためには、整えなければならない仕組みがたくさんあります。リフォームにより基本的な性能が高められた住宅は、価格面で有利に働くようにしなければなりません。 今までは、個人間の需要と供給だけで価格が上下することが当たり前でしたが、これからは、性能の差が価格に反映される中古住宅の評価システムを構築し、誰が見ても納得できる査定価格で流通させることが必要です。

国交省は既に、「住宅ストック維持・向上促進事業」として、建築・不動産業界や金融機関等の連携を強化し、既存住宅の性能・維持向上を図り、適切な評価をした上で流通させる仕組みを模索しています。

 

5.長寿命化リフォームという考え方

マイホームは、建てたら終わりで以後は安心...というわけにはいきません。住宅を長持ちさせるためには、定期点検の実施と必要に応じたメンテナンス、内外装材や設備機器の更新、家族構成の変化に伴う増改築等を行い、住宅の価値を維持・向上させることが求められています。 中でも、リフォームのタイミングはマイホームを総点検する絶好のチャンス!

自分のやりたいことに加えて、劣化改善や性能向上を目的とする工事を行えば、リフォーム後は安心して快適な生活を送ることができます。 このような考え方は、自宅をリフォームするケースに限らず、中古住宅を購入してリフォームする場合にもマッチします。以前は叶いませんでしたが、現在は、物件取得価格にリフォーム代金を加算して組める住宅ローンも充実していますので、このタイミングに、内装や設備機器を新しくすることも、また、不具合を補修することも可能なのです。

 

6.家と住宅ローンに縛られる人生なんて、全然楽しくない!

実際に、「土地+新築住宅」VS「中古住宅×リフォーム」では、どのような差が生まれるのでしょうか?

ここに一軒の木造住宅があります。30年前にAさんが1000万円で土地を購入し、工事費2000万円で建てた新築住宅です。3000万円全額を住宅ローン(金利1%、35年)で組み、返済月額は約 84,700円。この春、都心のマンションに移り住むことになり、近くの不動産会社に査定をしてもらいました。木造住宅の償却期間は約25年ですから既に建物の価値はありません。30年間で2000万円償却したことになります。土地の価格は一定だと仮定すると、資産価値として単純に2000万円目減りしたことになるのです。2000万円を費やして30年生活したわけですから、1年あたりの住居費は66万円です。

かたやBさん。この30年落ちの住宅を1000万円で購入し、1000万円のリフォームを行います。全額2000万円の住宅ローンを組み、毎月の返済金額は約56,500円(Aさんと同条件)。30年後の査定価格は同じく土地代1000万円のみ。30年間で目減りしたのは1000万円となり、かかった住居費はAさんの半分ということになります。

返済金額差の28,000円も魅力的です。教育資金や老後資金として、計画的な貯蓄に励むこともできそうですし、余暇の足しにすることもできそうです。

さて、上記の例でAさんは、30年前に新築でマイホームを取得した人ですが、今から新築物件を買おうとしているBさんと同世代の人に置き換えるとわかりやすいですね。AさんとBさん、果たしてトータルで見ると、どちらが楽しい人生を送れそうですか?

 

7.最後に・・・それでも新築希望ならとことん高性能なものを

不動産取引において新築住宅とは、「竣工後1年未満の未使用住宅」と定義します。未使用、つまり新品というだけです。そこには、内外装材のランクや設備機器の仕様、更には基本性能の等級などを一切問わないという、物としての不確実さを秘めています。

不動産業者が売り出す建売物件などは特に、割安感を醸し出すために見栄えのする安価な材料を多用することがあります。また、工数を減らして細部の納まりが雑になることもあるのではないでしょうか。割安だと思ったものは、所詮それなりの物件なのです。不動産業者が損をしてまで安く売ることなどないのですから。

そんなマヤカシに振り回されるくらいなら、とことんいいものを追求して注文住宅を新築しましょう。高性能なものはそれなりにお高いですが、お墨付きを得ることができ特典もあったりします。住宅性能表示制度や、長期優良住宅、低炭素住宅の認定制度など、高性能な新築住宅を一般物件と区別する仕組みは既に存在するのです。

そんな中、それでも安いからと言って低性能な新築住宅を選びますか?20〜30 年後には一昔前の性能と揶揄され、資産価値の無い物件として流通からはじき出される可能性もありますよ。新築という言葉に惑わされることなく、性能に見合った価格なのか、じっくり考える姿勢が大切です。 綺麗で快適なのは新しいうちだけです。マイホーム購入を決定づけるもっと大切なものが他にあるのかもしれません。