買主さんが感じる中古住宅に対するイメージは、古い、汚い、怖い、わからない…と、普通はネガティブ先行だと思います。「でも、値段的に買えそうな気がする」、その一点で新築ではなく中古狙いという考え方の人もいます。そうなると、買うことが目的になってしまい、不安要素を解決するのは後回しになりがちです。
中古住宅を購入するなら、建物の状況を知るためにインスペクション(建物状況調査)をすべきです。漠然とした不安も、建築士に状況を調査してもらうことで、どこがどんなふうに悪いのかを知ることができます。そしてそれが、解決可能なことなのか、それとも致命的なことなのか、わかったうえで買う買わないの判断をすることができます。ただ、インスペクションをするためには、売主さんの協力が必要です。買うか買わないかわからない人に、自分の家の良し悪しを調査されるのですから、あまりいい気持ちはしないでしょう。買主さんが買う意思を示したから、売主さんは他者の受付を一旦ストップしたのに、インスペクションしたもののやっぱり買わないというのでは、ちょっと気の毒です。そう思いませんか?
私たちの考えるインスペクションは、良し悪しを調査し買う買わないを判断するためではなく、購入を前提にしたリフォーム計画を適切に行うための調査です。なので、調査は売買契約後でもOK。そうなると売主さんの全面的な協力を得ることができますから、床下や屋根裏の劣化状況まできっちり確認することができます。
「売買契約前に建築士にインスペクションをしてもらうことにより、程度の悪い物件をつかまされるところを回避できて良かった」 そう聞くと、一見賢明な判断のように思われますが、もっと早い段階で程度の悪さを認識できたら候補に挙げる必要もなかったのではないか?と思うのです。買いたいと思った気持ちもその程度だったのなら、内覧に行く必要もなかったのかもしれません。
「とりあえず内覧に行ってみましょう!」という不動産業者がいます。「内覧に連れ出せばその気にさせることができる」と思っているようです。でもその前に、開示された情報を読み解いてその物件の特徴を知る必要があるはずです。足りない情報は先方に問合せをして、それでも内覧に行ってみたいかどうか考える時間が必要なのです。
気になる物件を示してくれれば、その物件の持つ特徴や、専門用語が示す意味合いをわかりやすく説明して差し上げますよ。その上で、内覧してみたいということであれば一緒に行ってみましょう。現地で確認しないとわからないこともありますので、内覧で得た情報も含めてあなたの希望がカタチになるかどうか、一緒に検討を深めていけば良いのです。
中古住宅に100点満点は存在しません。気になる点をテーブルに並べて、「自分にとってはどうなのか、許容できる範囲なのか、それでもここに住みたいのか」を考えることが大切です。決して買うことが目的になってはダメですよ。買える物件ではなく買いたいと思える物件を買うべきなのです。