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【福岡発】戸建てに住むなら、民法で規定された相隣関係を知り、境界を意識して暮らそう。

マンションに住んでいる場合、自分のテリトリーを侵される心配をすることはあまりないと思います。壁で囲まれた空間は自分たち家族のエリア。お隣さんがちょっとはみ出てる…なんてことは有り得ません。でも戸建て住宅の場合、隣家との境は目に見えない境界があるだけ。地面もつながってますし空間も共有している状態です。

 

塀で囲まれた範囲が自分の土地かと思いきや、本当の境界線は塀のラインからずれていることもよくあります。越境しているものは境界内に収めるのが基本ですが、屋根の先端や塀、物置など、すぐに移動することが困難であり越境された側に特段の問題がない場合は、現状を維持しつつ、将来工事する時には境界内に収めるという覚え書きを交わすこともあります。

 

さて、民法では相隣関係に関する規定がいくつかあります。近隣同士の権利調整などのため、土地や建物の所有者に権利や義務などを定めた規定です。ただし、民法は建築基準法とは異なり強制力はありません。したがって、民法に規定された権利を主張する場合、実際には裁判所の確定判決が必要となる事も多いようです。しかし、近隣と交渉する際には、非常に有益な知識となるので理解しておいた方が良いと思います。民法をお互いが知ることにより、無用なトラブルを防ぐことができるかもしれません。

 

「隣地使用権」は、工事を行う場合など、隣地所有権者に隣地の使用を請求できる権利です。家の新築や増改築で、どうしても隣地を使用しなければ工事ができないとき、その土地の使用を請求できることになっています。例えば、「境界ギリギリに建っている住宅の外壁塗装をするために、外部足場を組む場合」などです。お互い様の精神で、ことがうまく進むように協力しあうことを民法は求めているのです。

 

「囲繞地(いにょうち)通行権」も、他人の土地に囲まれた袋地の所有者が、囲んでいる隣地を通行できる権利です。ただし、隣地所有者にとっては不利益となるので、通行の場所や方法は必要最小限にしなければなりません。袋地が隣接している場合、その地に住んでいる人が前面道路に出るたびに自分の土地を通行するわけです。あまり気持ちのいいものではありませんが、民法の規定では当たり前の権利として明文化されています。

 

また、土地所有者は雨水など自然に流れてくる水を妨害してはならず、高地所有者は必要な排水を低地に流すことが出来ます。ひな壇状の土地に住んでいる場合、他に方法がなければ、水道管、ガス管、電線、電話線などを上層から下層隣地に配管、配線できると考えられています。

 

このように、自分の土地だけれども、相隣関係を保つために規定された義務もあるということを知るべきです。隣家が袋地の場合でその土地を通行している状況にあれば、物件価格も低めに設定されることでしょう。理由を知って納得の上で購入するのは良いのですが、後から知った場合は隣家に対する嫌悪感が募ります。そうならないためにも、購入対象の物件がどういう状態にあり、どんな法律で規制されているのか、前もって知ることはとても重要なのです。

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