「一般社団法人 住宅リフォーム推進協議会」のホームページには、リフォームに関する有益な情報が数多く公開されています。消費者の方はもちろんのこと、私たち事業者にとっても必要な情報がわかりやすく掲載されており、非常に助かっています。国が定めた制度をわかりやすく解説し周知することにより、消費者・事業者双方にとって有益かつ健全なリフォーム市場を形成することが、協議会の使命なのです。
消費者向けの刊行物で代表的なものは「マンガでわかる住宅リフォームガイドブック」です。この冊子は、平成25年の初版から毎年改訂版が発行され、私たち事業者にとっても、国主催のリフォームに関する勉強会やセミナーでは必ず配布されるお馴染みの冊子です。
その中の表記で一つ気になる点があるのです。それは、「費用の目安や業者ごとの対応の違いを知るために最低でも2社以上に見積りを依頼(相見積もり)し、その際に対象住宅の調査をしてもらいましょう。」というものです。そして、「無料でできる範囲で見積もりを作成してもらいたいことなどを、あらかじめ伝えましょう。」とも書いてあります。無料でできる相見積もりで、業者の対応の良し悪しを判断することなど、できるのでしょうか?しかも現況調査も無料の範疇で依頼するなんて、事業者の身にもなって下さい…と言いたい気分です。相見積もりを否定はしませんが、その目的を取り違えると不利益なことが自分に降りかかる可能性もあるのです。
現況調査を行い見積書を作成する行為は非常に手間暇のかかるものです。それを、当たり前に「無料で」という根底には、この作業自体を、リフォーム工事を請け負うための営業活動の一環とみなしているからに他なりません。だから、相見積りさせられたそれぞれの業者は、仕事をとることが大命題となり、消費者の目を手っ取り早く引くために、価格だけの競争に陥ってしまうのです。「値引き」「キャンペーン価格」「今なら」「あなただけに」とお得感を醸し出し、なんとか相見積もりで競り勝ちたいと思っているのです。
その先にある物は何でしょうか? 適正な利益が計上できないまま受注した仕事に対して、如何に利益を出すかを考えるのは、企業としては当然のことです。その為に材料の仕様を落としたり、手間を惜しんで雑な仕上がりになることもあるかもしれません。消費者側も、安いからにはそういう事もはらんでいる可能性を想像すべきです。
まるで出来合いのものを買うように、安いのが一番!と単純に決断してもいいのでしょうか?見積に反映された工事の範囲や内容、材料の質や作業手順によって価格は上下します。安いと思ったのは、実は表面的な営繕工事に過ぎず、かたや高いと思って断った方は、構造や下地から取り換える根本的な改善工事だったのかもしれません。目先の高い安いに執着しすぎると、相見積もりの目的が達成できないまま業者の思惑に乗せられてしまうのです。
何のためにリフォームを思い立ったのか…そのリフォームを実現してくれそうな相性の良い会社に出会い、相談する中でお互いの信頼を深めていく方がよっぽど大切なことだと思いませんか?その上で、現地調査や提案書の作成を依頼したいと思ったら、作業の対価をきちんと支払い、より具体的な打合せに進むべきでしょう。どうぞ、本音で付き合える相性の良い業者さんと出会ってください。そして、その方法は相見積もりだけではないことを知ってください。