· 

【福岡発】迷える仲介業者からの相談電話

理念に現場が追いついていない状況

中古住宅の流通活性化を目指し、国が制度化しつつある耐震診断やインスペクションの動きですが、正直なところ、「これはいい制度ですね!売主さんに積極的に提案して、安全・安心な家を流通させるべく頑張ります!」という業者はまずいません。

 

どちらかというと、「そんなことしてどうする!?不具合の発見は値引きにつながるから、仲介手数料も落ちるだろ~が!そもそも売れなかったら商売あがったりなんだから、余計なことはしなくていいんだよ!」という考えの人が多いのでは?と思います。

 

私たち、業者さんの相談窓口ではないのですが…

先日事務所にかかってきた電話も正にそんな感じでした。その人は両手仲介の立場にある宅建士。購入が決まった後に買主の希望でインスペクションが行われたそうです。リフォームを前提にしたインスペクションで、実施したのは買主が自ら依頼したリフォーム会社なのですが、その担当者がこう言ったそうです。「図面通りに筋交いが入ってないので希望通りのリフォーム計画を進めるのは困難を極める!」と。買主の怒りは宅建士に向けられています。何故こんなことになるのでしょうか??

 

そもそも耐震診断もインスペクションも売主の義務ではありません。しかも、図面通りになっていない現場は山ほどあります。それを一方的に責められる状況に陥っているって、どういうことなんでしょうか?購入前の重要事項説明で、しっかり時間をかけて説明すれば何も問題ないはずなのですが。

 

買主にしてみれば、この診断により耐震性能が確保されていない物件だということが分かり、補強工事に割くべき費用を考えると、自分の希望が叶えられない状況に陥っているのかもしれません。このままでは住宅ローン減税も受けられなさそう…、自分で思い描いていた最高の道筋通りに行かなくなったのでしょう。その怒りを宅建士にぶちまけている姿が想像されます。

 

お互いにどうすればよかったのか?

両手仲介に携わる宅建士はどうすれば良かったのでしょうか?市場に出す前に売主に耐震診断を促し、購入する前に診断結果を買主に説明すべきでした。そうすれば、全体計画が大きく狂うこともなかったはずです。

 

かたや買主の過ちは、売主側の宅建業者に直接問い合わせを入れたことです。建物の状況を把握する力のある宅建士を伴っていれば、内覧時点で耐震補強を含めたリフォームの可能性についてディスカッションできたはずですから。私たちは、そう思います。