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【福岡発】耐震性が不足していると、建築基準法の目的は達せられない

建築基準法第一条には何と書いてある??

「この法律は、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、もつて公共の福祉の増進に資することを目的とする。」

 何ともお堅い表現ですが、要は、建築物を建築する際に順守すべき基準を定めることにより、国民の生活を守るということ、但し、その基準は最低限守るべきものでしかありませんよ、ということです。

 そして、この最低限の基準は、法改正が行われるごとに厳しくなったり緩和されたりしています。特に厳しくなる傾向が強いのは耐震性能の確保に関するものです。

耐震性能は建築時期で三つのグループに分けられる

日本の木造戸建住宅は、「耐震」という物差しで三つのグループに大別することができます。1981年6月の建築基準法改正前に建築確認を受けた「旧耐震基準」の建物と、それ以降の「新耐震基準」で建てられた建物、そして、2000年の法改正以降に建てられた「現行基準」と呼ばれるものです。2000年の法改正から現在に至るまで、耐震基準に関する更なる法改正はありませんので、現在の基準が最新の基準ということになります。が、あくまでも建築基準法で定められた最低基準でしかありません。逆に考えると、「旧耐震」のみならず、「新耐震」でさえも、現行の最低基準を満たしているかはわからない状態だということになります。

ここで、一つの調査結果を見てみましょう。2016年熊本地震における木造住宅の被害状況を、国交省が建築時期別にまとめたものです。地盤等の要因も考えられますが、おおむね、建築時期が古いほど倒壊・崩壊や大破の割合が高くなっています。最新の最低基準である「現行基準」でも、全体の6%にあたる建物が甚大な被害を受けたのかと思うと、やるせないものを感じますが、新耐震基準の木造住宅は全体の18.4%、「旧耐震基準」のそれは全体の45.7%もが、地震で瞬時に凶器と化し、人々の生活に襲いかかったのです。

法改正が行われても、危険な家は存在し続ける

建築基準法の目的をもう一度思い出してみましょう。建築基準法は、国民の生命、健康及び財産を守るために存在します。地震がひとたび起これば、健康や財産だけではなく生命さえも奪われてしまうことだってあるのです。度重なる耐震基準の改正を見れば、建築時期における耐震性能不足は明らかなのですが、そんな危険な住宅は今も存在し続けているのです。

 

この現実をどう捉えますか?これから購入するマイホームだけではなく、身近な人の住まいについても、「耐震基準」という物差しで、その安全性について考えてみては如何でしょうか。