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【福岡発】自然災害からコンパクトシティ構想を考えてみる

 避難行動を決断する難しさ

南九州を襲った大雨は川の氾濫を招き、そこに住む人々に甚大な被害を及ぼしました。警報による避難行動は今回も徹底されず、土砂災害やがけ崩れ、浸水による人的被害が多数発生しています。命を守る行動を躊躇せず行うことが、何故徹底されないのか?いつもそう思うのですが、いざ自分がその立場になったら、雨の中、荷物を持って移動することが本当にできるだろうか?とも思います。そのうち雨も止んで何事も起こらないのではないか?避難所の不自由さを考えると、何の根拠もなくいいように考えがちです。

 

ハザードマップは根拠ある防災地図

2年前の西日本豪雨の時もそうでしたが、今回も、ハザードマップで危険エリアとされていた地域に被害が集中しています。これは何を意味するのか?ハザードマップは根拠なく色分けされた単なる地図ではなく、過去の災害や気象変化から導き出した、根拠ある防災地図だということです。ハザードマップが整備され始めたころは、「そんなもの発表して、勝手に資産価値を落とすな!」と非難する人もいたようですが、現在は、不動産取引の場においても重要事項として必ず説明しなければならない、皆が知るべき情報なのです。

 

コンパクトシティ構想でこれからの街をデザインする

人口の増加に伴って街の中心部からどんどん広がっていった住宅地。山間部を開発して造られた大型団地ががけ崩れの危険地域に指定されていることもあります。山間部に点在する家々が土砂災害に巻き込まれる悲劇もたびたび起こっていますし、想像を絶する雨量に川の処理能力は追いつかず、氾濫による浸水被害も甚大です。このような災害が起こるたびに大切な命は奪われ、築き上げてきた街は破壊されてしまいます。そして、復旧作業には膨大な時間とお金がかかるのです。

もしかしたらコンパクトシティ構想は、こうした自然災害の被害を最小化するためにも必要なことなのかもしれません。この構想は、広がりすぎた生活圏をコンパクトにしてインフラ整備や交通網の維持を集中的に行うことにより、限られた税収で街を維持していくという考え方です。自治体の判断で立地適正化計画が立案され、逆線引きによる再建築の制限などが行われています。

ちょっと飛躍しすぎかもしれませんが、究極的には、台風にも洪水にも地震にも強い鉄筋コンクリート造の共同住宅を行政が用意し、住民はそこに住むことが義務付けられるような世界になるのかも? 被害状況を伝えるテレビ画面にくぎ付けになりながら、ふとそのように感じたのでした。

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